中田舎暮らし4
<廓葬式・食べ物編>
食べる話は熱心だ事!

最近は、葬式も葬儀場で行うおうちが増えました。
自宅で行う場合でも、料理は外から取る場合がほとんどです。
でも、私がここへ来た頃は、まだ、自分たちでつくっていました。
1997年に子供を産んだ直後で
お手伝いはこなくていいよ、と、
廓のばーちゃん達が言ってくれた
(私もそれどころじゃなかった)
あのあたりが最後の炊き出しだったと思います。

メニューを書いてみます。
メニューのクリックすると細かい話にジャンプします。


三角揚げの甘煮
きんぴらゴボウ
ネギぬた
お麩のゴマ酢よごし
ほうれん草
みそなしのみそ汁
うどん
里芋の煮転がし
精進揚げ
米粉の団子
激論おにぎり


三角厚揚げの甘煮
”三角煮”または、短く、”三角”とよぶこともあります。
三角の厚揚げって見たことありますか。
四角いのを半分に切るんじゃなくって、
はじめから、二等辺三角形に切ってあげてあるのです。
葬式の段取りというと、これと、精進落としの刺身を
数を考えて注文するところから始まります。

料理は、これをしょうゆとたっぷりの砂糖で煮る、という物です。
たっぷり、が、どの程度の物かというと
厚揚げだったはずなのに、
油揚げの厚さに仕上がるぐらいな感じです。

鍋に向かったばあちゃんが、一キロ入った砂糖袋を手に
”メグミさん、砂糖がねえから、もらってきてくんない”
というので、”・・(あるじゃん?)”と思いつつももらって戻ると
さっきの砂糖はすべて鍋の中に入ったあとだったりします。

だしは使いません。
お葬式には特別使ってはいけない物があって、
だしもそうらしいです。

なれると結構おいしいです。
いなり寿司のお揚げだけレトルトで売っている、
あの味が近い感じです。

真夏の友引がはいるお葬式の時、
あさってと明々後日の三角煮を
今日煮ちゃってだいじょうぶかで悩み、
ばあちゃん達も首をひねったきり
黙り込んでしまったことがありました。
当時まだここへ来たばかりで、
”こういうケースでは、若いモンは黙っている物だ”ということが
わかってなかった私が、ぽろっと、
”ショウガ入れたらどうかしら。”といってしまい、
菊江おばあちゃんに、
”メグミさんから新しい意見があります!”
といわれて、びっくり!
合議の末採用となり、男衆にも好評だったので、
公式採用が決まり
その後も葬式たんびに
”こっちの組では、生姜をいれるんだいね。”
と、言われてましたっけ。
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きんぴらゴボウ
これも、葬式バージョンがあります。
にんじんを入れないんです。
赤い物はダメ、ということのようです。
(もちろんだしも入れません)
結婚式の引き出物や、
結納に使われそうな物は全部ダメみたいです。

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ネギぬた
ここはネギの名産地深谷の隣町。
ブットイおいしい甘いネギがとれます。
斜めにざくざく切った大量のネギをいったんゆであげ、
それを砂糖いっぱいの酢みそであえるのがこの料理です。
基本のネギがおいしいので、
甘みが深くて意外といけます。
葬式じゃなくてもこさえる、という人が結構いるようです。

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お麩のゴマ酢よごし
これは、ここで初めてみた食べ物です。
まず、お麩は、斜めに切ったフランスパンみたいな
お麩を使います。
このお麩自体、他のことに使ったことがないので、
名前はよくわかりません。
これを水で戻します。
そして一枚一枚手で挟んで水を切り並べます。
それと別に、またまた大量の砂糖に、
少しの酢と、お湯を足してといた物に、
いささか暴力的なほどの量の金ゴマを混ぜた、
たれをつくります。
先ほどの麩を表びっとん、裏びっとん、たれに浸しては、
皿に盛りつけていきます。
重ならないようにおくので、
スチロール使い捨ての角皿に、乗っても8枚ぐらいです。
これも不思議なおいしさですよ。

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ほうれん草
誰かが畑からとってきてくれた、大量のほうれん草を
ゆでるだけです。
新鮮だし、時期が合えば、
文句なしにおいしいです。

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みそなしのみそ汁
これが、不思議。
味噌を入れてはいけないと言って、
しょうゆで味付けした物を、
味噌汁とよぶ不思議。
かなり後まで、おわんの中の透明な液体を
”あんなに大量につくるから
味噌汁の上澄みの部分だけが
このおわんに入っているのかな?”
と何となく思ってはいましたが

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うどん
ここらの寄り合いは、葬式に限らず、うどんでしめます。
お経が始まる前にゆであげちゃって
小さな玉にて、ざるにあげてあります。
それをお皿に載せて配膳します。
食べる頃には、しっかり玉になってますから、
先述の味噌なしの味噌汁につけて、ほどいて食べます。

地粉のとれるところなので、
製麺やさんはちいさくやっているうちが結構あり、
そこで生麺を買って使います。
ずいぶん前にゆでてあっても大丈夫なのは、
そういう麺だからかと思います。


以前、”たくさんあるからこれを使って”と、
干したそうめんを用意したおうちがありましたが、
タイムスケジュールは変わらないので、
食べる頃にはくっつくのを通り越して乾燥してました。
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里芋の煮転がし
ここらの里芋(自家用ほりたて)は、うまい!
砂糖沢山、うちではつくることのない味。
密かに楽しみにしている一品です。

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精進揚げ
うどんのおかずとしてつくられます。
その季節ごとに
畑にある物でする感じですが、
かなり前に作業が完了するので、
葉っぱ物はありません。
これも不祝儀を意識して、
にんじんは使いません。
仕出しになってからも、
梅型にんじんなんか入っていると、
一瞬、沈黙が走るのがおも
しろい。
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米粉の団子
三方2つに49個ずつ
ピラミッド型に積み供えるお団子作り。
これをつくるのは一大イベントです。
まずお米を農協あたりの機械で粉にします。
これを、熱いお湯でこねます。
いい具合の塊にこねあがったら、まず2等分し、
それぞれをさらに50個に分け
ピンポン玉のような団子にします。
10人以上が、みんなで作業すると、
この50個がたいへん。
何回もやりなおして数を合わせます。
軽口が飛び交い、結構これが楽しそう。
効率は悪いのですが、
早くおわったところで帰れる訳ではないし。

それをたっぷりのお湯でゆであげ、
2個は、煮えぐあいの確認のため、割ってみる分になります。
残りの98個が、半紙を敷いた2つの三宝の上に
一段目は、5×5の25個、二段目は4×4の16個
3段目が3×3,4段目は2×2

・・一番上に最後の一つを乗せて、祭壇に飾られます。
葬列とともに運ばれ、遺族の手で、墓場に供えられるようです。
お下がりが廓の人々に配られ、
一軒2こづつ持ち帰ります。
薄く切ってトースターで焼き、しょうゆをつけていただくと、
たいへん美味です。
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激論おにぎり
昼の仕出しをとらないで、おにぎりですますときもあります。
おやつ代わりにもなるし、無駄もでない、
なんと言っても農家が自家用に持っているお米はおいしい。
いつも好評です。
ただ、たいへんなのが、中身の選定です。
不祝儀にふさわしく、誰からも文句がでない中身。
ばあちゃん達の討論会が始まります。
以下、実録。

”鮭、赤い梅干し、赤い物はダメだろう。”

”おかか、は?”

”精進落としまでは、魚物はダメだよ。”

”昆布はどうだ?”

”「よろこぶ」っていうぞ。”

”塩結びでいいか?”

”わざわざつくるのにそれじゃつまらないし、
男達が”何も入ってないぞ
”とかいいそうだ。”

(はじめに戻り繰り返す。)

三回ぐらい繰り返された後、
昆布の佃煮でいいかどうかを代表が、
お葬式を出している家の主婦、親族に確認。

承認を受けて買い出し出発。

赤くない梅干しが売っていないので
何軒もスーパーを梯子する旨、携帯で連絡が入り、
誰かが、自分のうちの
3年ねているシソなし梅干しを出してくるまで
かえってこられない。
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大体のことを思い出しつつ書いたので、
正確さにはかけるかもしれません。
地方で違いもあるかもしれませんね。
ご感想メール、お待ちしてます。
                        2005.3.2



       ・・・・続く予定です。
                                  


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