職人母見参6
< 負け >
ネズミもいないのに走るのは無駄。


小学校の長距離走大会。
最近は、親の応援要請のプリントが配られる。
優勝をねらうような子供の親は
やっぱり見に行かざるをえない。

昨年優勝の我が子。優勝っていっても
少子化と過疎が一緒に来ている田舎のこと、
学年で男女別だと20人規模の話である。

で、今年は、2位だった。
いつも2位だった友だちが、
勝つために作戦を考え抜いたのだろう、
スタートからぶっちぎり、
新記録樹立の走りっぷり。

しっかり負けた。

負けたうちの子供は
クラスのみんなの前でべそをかいていた。
母は”ろくに練習もしないで負けて泣くな!”と
一言行ってさっさと帰宅した。

この負けはよかった。

ここのところ、発言といい、態度といい
子供らしいと言いくるめるには
鼻につきすぎるほどに、
全く絵に描いたような井の中の蛙っぷりが
母の心配だったのだ。
担任の先生も面談の時、私に、
”一度ちゃんと負けるといいんですけど”
そう言うくらいのものだった。
この際、ヒヨヒヨしたプライドはきっちりつぶして頂こう。

我が子が泣くのを見れば
内心は、かわいそうだと思うけど、
泣いて同情を引き、
優しくしてもらってやり過ごすやり方は
結局負けを生かせない。

”泣く前に最善を尽くせ!”
”泣きたいならあとで誰のいないところで泣け!”
”勝負事は人前で泣いたらその時点で負け”
これはわが家の伝統の家訓である。

・・・そう言えば、私の母も非情なまでに
泣いたら相手にしてくれなかったな・・・・
育ててみて初めてわかる、
育てられたように育ってしまった頑固な私。
かけっこ一つで家訓まで飛び出す、この堅さ・・・
なるべくしてなった(?)、職人母・・・

生きにくいような育て方をしちゃってるのかな〜

私にはこれしか出来ないんだけど。


(2005.12.5)

 ・・・・職人母シリーズとして続きをかけるか?



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