職人母見参7
< 続・負け >
母も走って少しやせたら?


子供の通う小学校では
曜日よって業前体操というのがある。

月曜日は外を走る。
タイムトライアルと称して、
中距離の競走をしたりする。

長距離走大会の負け以来
このタイムトライアルでも一番になれない、うちの子供。

”みんなの前で、泣く程悔しかったんなら、
少しは練習したらどうなのよ!”
前編に引き続き、べそべそが嫌いな職母は、
いらつき気味であった。
冬休み、ぐーたらしている”奴”に、
犬の散歩、兼、かけっこの練習を提案。
もともと動くのが好きな子供のこと、
そういやがりもせずにくっついてきた。

走らせてみると、なんのことはない、
敗因は体力の温存しすぎなんである。
気力が負けてあごがあがっているだけで、
”はい、ラスト”という声を聞いたとたん、
短距離でも一等賞が貰えるスピードが出せちゃう。
だませばそのまま、3分ぐらい走れちゃう。
(長距離走の記録は3分少々・・
どこが長距離なんだ?との疑問は
学校にお問い合わせください)

何回か、そうやって走る経験を積んでから、
”最初からとばしたって、あの程度の距離なら全然へいき!
それだけの時間、スピードだしてだして走れてるじゃん!”と
しっかり太鼓判を押してやった。
母親の効能をばっちり使った強力暗示だ。

年が明けて、最初のタイムトライアルの日。
深く期すところがあったらしい。
タイムトライアルがあることさえ言わないで出かけていった。

夕方学童保育へ迎えに行くと、
満面の笑みとともに走ってきて、
真っ先に
”きょうね、タイムトライアルあったんだよ。
朝から言わなかったけど、ホントにドキドキしていたの。
最初から、絶対スピードだすって心に決めてたの。
他の人のことなんか全然気にしないでとにかく
自分が速く走ろうと思ってがんばったの。
それでね・・・一番になったんだ!”

前回”一度負けた方がいい、”といってくださった
担任の先生も、スタートと同時に飛び出した子供に
乱暴なまでの応援をしてくださったという。
礼節を重んじる先生が、思わず敬称をかな繰り捨てての
励ましに、力が出た、といっていた。
(2番の子も同じクラスなんで・・・余談ながら
普段から呼び捨てじゃ、こうはいくまい、と、思ったものです。)
終わったあとでも、
”2番のお友達に勝ったんじゃないよ、自分に勝てたんだよ。”
といって褒めてくださったと言っていた。

”よくやった、よくやった”と
ぐりぐり頭をなでてぎゅうぎゅう抱っこしながら
あっちこっちに感謝したい気持ちで一杯の
職母でありました。

それにしても母の暗示って効き目絶大だわ〜
・・・私が陶芸家を続けてきたのも・・・・???


(2006.1.28)

 
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